GRヤリスの普段使いは後悔する?維持費や弱点まで徹底解説

トヨタ
GRヤリス トヨタ公式

WRC(世界ラリー選手権)を勝ち抜くために生まれたトヨタ GRヤリス。その圧倒的な走行性能は多くの車好きを魅了してやみません。しかし、その一方で「GRヤリスを普段使いするのは大変なのでは?」という声も聞こえてきます。

通勤や買い物といった日常のシーンで、本当にこのモンスターマシンを乗りこなせるのでしょうか。購入してから失敗したと後悔したり、走りが楽しくないと感じたりすることはないのでしょうか。この記事では、GRヤリスの普段使いに関するあらゆる疑問にお答えします。

気になる年間の維持費はいくらですか、という現実的な問題から、MTとATどっちがいいのかという悩ましい選択、そしてGR86とどっちが速いのかという比較まで深く掘り下げていきます。また、実際の購入層に女性はいるのか、人気グレードの見た目や性能の違い、リセールにも関わる人気色は何か、さらには競技用グレードであったRCがなぜ廃止になったのかという背景にも触れます。

もちろん、知っておきたい弱点とそれを上回る良い所は何か、驚異の0-400mタイムが示す実力など、GRヤリスが持つ光と影の両面から、その本質に迫ります。


  • GRヤリスの普段使いにおけるメリットと具体的な注意点
  • RZやRZ “High performance”など人気グレードごとの違いと選び方
  • 税金やガソリン代を含めた年間の具体的な維持費
  • MTと新開発8速AT(GR-DAT)の特性と選択のポイント

GRヤリスは普段使いできる?購入前の疑問を徹底解説

  • 買って後悔?走りは楽しくないという噂の真相
  • 知っておきたい弱点とそれを上回る良い所は?
  • 人気グレードは?見た目の違いもチェック
  • リセールバリューにも関わる人気色は?
  • 気になる購入層。女性オーナーはいるの?
  • なぜ競技用のRCグレードは廃止されたのか

買って後悔?走りは楽しくないという噂の真相

買って後悔?走りは楽しくないという噂の真相
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GRヤリスの購入を検討する際、「買ってから後悔しないか」「日常の運転では楽しくないのでは?」といった不安を抱く方は少なくありません。

結論から言うと、GRヤリスは運転を心から愛する人にとっては最高の相棒となり得ますが、実用性を最優先する方にとっては後悔につながる可能性があります。楽しくないと感じるかどうかは、車に何を求めるかという価値観に大きく左右されるのです。

後悔の声として聞かれるのは、主に実用性の側面です。例えば、3ドアハッチバックのため後部座席への乗り降りは決してしやすいとは言えません。また、後席は頭上空間も足元も広くはなく、大人が長時間乗車するには窮屈に感じるでしょう。乗り心地に関しても、スポーツ走行を前提とした硬めの足回りは、路面の凹凸を拾いやすく、同乗者から不満が出る場面も考えられます。

しかし、これらの点は「走り」の楽しさと表裏一体です。ドライバーの操作に俊敏に反応する剛性の高いボディと引き締められたサスペンションは、ワインディングロードやサーキットでは、まさに水を得た魚のような走りを見せます。エンジンの回転数を上げて加速する際の高揚感や、意のままにコーナーを駆け抜ける一体感は、他のコンパクトカーでは味わえないGRヤリスならではの醍醐味です。

したがって、GRヤリスが「楽しくない」と感じる場面は、恐らく交通量の多い市街地でのストップ&ゴーが続くようなシチュエーションかもしれません。ですが、少し郊外へ足を延せば、この車が持つ本来の魅力、つまり運転すること自体の楽しさを存分に感じられるはずです。購入を後悔しないためには、ご自身のカーライフを想像し、実用性のデメリットを許容できるか、そして何よりも「運転の楽しさ」にどれだけの価値を見出すかを自問することが鍵となります。

知っておきたい弱点とそれを上回る良い所は?

知っておきたい弱点とそれを上回る良い所は?
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GRヤリスは非常に魅力的な車ですが、完全無欠というわけではありません。購入を検討する上で、その弱点と、それを補って余りある良い所を正確に理解しておくことが大切です。

普段使いで気になる弱点(デメリット)

まず弱点として挙げられるのは、実用性に関するいくつかの点です。 前述の通り、3ドアであるため後部座席へのアクセスは不便であり、スペースも限られています。家族での使用や多人数での移動が多い場合には、この点が大きな障壁となる可能性があります。

次に燃費です。搭載されている1.6Lターボエンジンは高性能ですが、その分、燃料消費は多くなります。特にRZ系のグレードではハイオクガソリンが指定されており、WLTCモード燃費は進化後モデルのMT車で12.4km/L、AT車で10.8km/Lと、経済性を重視する方には厳しい数値かもしれません。

また、乗り心地の硬さも弱点の一つに数えられます。路面の状況をダイレクトに伝える足回りは、スポーツ走行ではメリットですが、日常的な移動では疲れを感じる原因になることもあります。さらに、車両価格もコンパクトカーとしては高価な部類に入り、高性能スポーツカーであるため盗難のリスクにも備える必要があります。

全てを忘れさせる良い所(メリット)

一方で、これらの弱点を霞ませるほどの素晴らしい長所があります。 最大の魅力は、言うまでもなくWRC譲りの圧倒的な走行性能です。パワフルなエンジンと電子制御4WDシステム「GR-FOUR」がもたらす加速力と安定性は、あらゆる道でドライバーに自信と感動を与えてくれます。

コンパクトなボディサイズも、日本の道路環境においては大きなメリットです。全長約4m、全幅約1.8mというサイズは、狭い道や駐車場での取り回しを容易にし、運転のストレスを軽減します。見た目に反して小回りが利く点も普段使いでは重宝するでしょう。

そして何より、「誰もが意のままに操れる」というコンセプト通り、ドライバーの意思に忠実に反応するハンドリングは、運転すること自体の根源的な楽しさを再認識させてくれます。所有欲を満たす特別な内外装デザインも、日々のカーライフに彩りを加えてくれる要素です。

これらの点を踏まえると、GRヤリスは実用面でのいくつかのハードルを乗り越える覚悟さえあれば、それ以上の価値と満足感を提供してくれる特別な一台であると言えます。

人気グレードは?見た目の違いもチェック

人気グレードは?見た目の違いもチェック
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GRヤリスの購入を具体的に考え始めると、どのグレードを選ぶべきかという問題に直面します。主に検討されるのは「RZ」と、その上級仕様である「RZ“High performance”」の2つです。どちらもGRヤリスの魅力を存分に味わえるモデルですが、装備内容に違いがあり、それによって走りの特性や価格も異なります。

最も人気が高い「RZ“High performance””」

多くのユーザーに選ばれているのは、最上位グレードの「RZ“High performance”」です。このグレードは、GRヤリスのポテンシャルを最大限に引き出すための装備が標準で備わっています。

最大の特徴は、前後に「トルセンLSD(リミテッド・スリップ・デフ)」が装着されている点です。これにより、コーナリング中の加速時などに左右のタイヤの回転差を最適に制御し、より鋭く安定した旋回性能を発揮します。

また、ホイールには軽量かつ高剛性なBBS製の鍛造アルミホイールが採用され、ミシュランの高性能タイヤ「パイロットスポーツ4S」が組み合わされます。これらの装備は、サーキット走行など限界領域でのコントロール性を高めることに大きく貢献します。

基本性能を十分に味わえる「RZ」

一方の「RZ」は、GRヤリスの基本性能を十分に楽しめるスタンダードなグレードです。エンジンや駆動方式は「RZ“High performance”」と共通ですが、前後のLSDやBBS製鍛造アルミホイールは装備されません。

しかし、その分価格が抑えられており、コストパフォーマンスに優れています。日常的な走行やワインディングを楽しむレベルであれば、「RZ」でもその性能に不満を感じることは少ないでしょう。自分好みにカスタマイズしていくベース車両として考えるのも一つの手です。

グレードによる見た目の違い

見た目における最も分かりやすい違いは、ブレーキキャリパーの色です。「RZ“High performance”」はスポーティな印象を際立たせる赤色に塗装されていますが、「RZ」は標準の黒色となります。また、前述の通りホイールのデザインも異なります。

内装では、「RZ“High performance”」にはプレミアムスポーツフロントシートが標準装備されるなど、快適装備にも差がつけられています。

どちらのグレードを選ぶべきかは、サーキット走行まで視野に入れるのか、それとも主に公道での走りを楽しむのか、そして予算との兼ね合いによって決まります。ご自身の使い方に合った最適な一台を見つけるために、これらの違いをしっかりと比較検討することが大切です。

グレードRZ “High performance”RZ
主な特徴走りの性能を極めた最上位モデル基本性能を十分に味わえる標準モデル
LSDトルセンLSD(フロント&リヤ)
ホイールBBS製18インチ鍛造アルミホイールENKEI製18インチ鋳造アルミホイール
タイヤミシュラン PILOT SPORT 4Sダンロップ SP SPORT MAXX 050
ブレーキキャリパー赤色塗装黒色塗装
フロントシートプレミアムスポーツシートスポーツシート
価格(MT)4,980,000円4,480,000円
価格(AT)5,330,000円4,830,000円

リセールバリューにも関わる人気色は?

リセールバリューにも関わる人気色は?
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車を購入する上で、ボディカラーは見た目の印象を左右するだけでなく、将来的なリセールバリュー(再販価値)にも影響を与える重要な要素です。GRヤリスにおいても、人気色は存在します。

傾向として、中古車市場で安定した需要が見込めるのは、やはり定番のホワイト系とブラック系です。GRヤリスでは、特に「プラチナホワイトパールマイカ」が人気を集めています。パール塗装ならではの深みと輝きが、GRヤリスのグラマラスなボディラインを際立たせ、高級感を演出します。同じ白でも、ソリッドカラーの「スーパーホワイトⅡ」も、WRCのラリーカーを彷彿とさせるクリーンでスポーティなイメージから根強い人気があります。

ブラック系では、深みのある輝きが特徴の「プレシャスブラックパール」が支持されています。ボディの抑揚が強調され、精悍で引き締まった印象を与えます。

これらの定番色が高いリセールを期待できる理由は、流行に左右されにくく、幅広い層に受け入れられやすいためです。中古車を探している多くの人が、無難で飽きのこない色を好む傾向にあることが背景にあります。

一方で、GRヤリスには「エモーショナルレッドⅡ」や、2024年モデルから追加された「プレシャスメタル」といった個性的なカラーもラインナップされています。これらの色は所有する満足感を高めてくれますが、リセールバリューという点では、白・黒系に比べると若干不利になる可能性も考えられます。

とはいえ、車は自分が気に入った色に乗るのが一番です。リセールバリューも一つの判断材料としつつ、ご自身の好みを最優先して、愛着の持てるボディカラーを選ぶことをお勧めします。

気になる購入層 女性オーナーはいるの?

気になる購入層 女性オーナーはいるの?
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GRヤリスのような高性能スポーツカーは、どのような人々が購入しているのでしょうか。その主な購入層は、40代から50代の男性が中心となっています。この世代は、かつての国産スポーツカーブームを体験し、車へのこだわりが強く、経済的にも余裕が出てくる年代であることが理由として考えられます。特に、走行性能を追求した最上位グレード「RZ“High performance”」を選ぶ人が多いのも特徴です。

しかし、購入層はそれだけにとどまりません。従来のトヨタ車ユーザーだけでなく、欧州の高級スポーツカーからの乗り換えや、熱心なラリーファンなど、多様なバックグラウンドを持つ人々がGRヤリスを手にしています。これは、GRヤリスが単なる速い車ではなく、WRCで勝つという明確な目的を持って開発された「本物」であることの証明とも言えます。

では、女性オーナーはいるのでしょうか。答えは「イエス」です。数は多くないかもしれませんが、運転そのものを楽しみたい、マニュアル車を操りたいと考えるアクティブな女性オーナーも確かに存在します。

あるオーナーインタビューでは、48歳の女性オーナーがGRヤリスを日常の通勤にも使い、サーキット走行まで楽しんでいる様子が紹介されています。彼女のように、実用性よりも運転の楽しさや車との一体感を重視する女性にとって、GRヤリスは非常に魅力的な選択肢となり得るのです。3ドアで後席が狭いといった点は、主に1人か2人で乗ることが多いユーザーにとっては、大きな問題にはなりません。

このように、GRヤリスは特定の層だけでなく、純粋に「走る喜び」を求める多様な人々に選ばれています。

なぜ競技用のRCグレードは廃止されたのか

なぜ競技用のRCグレードは廃止されたのか
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2024年4月に登場した進化型GRヤリスでは、ラインナップから「RC」というグレードが姿を消しました。このRCグレードは、モータースポーツへの参戦を前提とした、いわば「素の状態」のモデルでした。快適装備であるエアコンやディスプレイオーディオなどを省き、ホイールもスチール製にするなど、購入後にユーザーが自由にカスタマイズすることを想定した廉価グレードでした。

このRCグレードが廃止された背景には、主に2つの理由が考えられます。

一つ目は、GRヤリスの特殊な生産体制です。GRヤリスは、愛知県の元町工場内にある専用ライン「GR FACTORY」で、熟練の技能を持つ職人によって多くの工程が手作業で組み立てられています。そのため、そもそも大量生産ができません。発売当初から世界中で注文が殺到し、常に多くのバックオーダーを抱えている状況でした。

二つ目は、世界的な半導体不足や原材料価格の高騰です。限られた生産能力の中で効率的に車を製造していくためには、より需要が高く、利益率も見込めるグレードに生産を集中させる必要がありました。GRヤリスにおいては、快適装備も充実した「RZ」や「RZ“High performance”」が販売の主力であり、競技ベース車両である「RC」の需要は限定的でした。

これらの生産上の制約から、トヨタは販売の主力であるRZ系グレードの生産を優先し、バックオーダーを解消するために、RCグレードの廃止という決断に至ったと考えられます。進化型モデルで、より幅広い層にアピールする8速AT(GR-DAT)が追加されたことも、この戦略を後押しした一因かもしれません。

GRヤリスの普段使いに関わる費用と性能

  • 年間の維持費はいくらですか?内訳を解説
  • MTとATどっちがいい?それぞれのメリット
  • GRヤリスとGR86どっちが速いか徹底比較
  • 驚異の0-400mタイムとその加速力

年間の維持費はいくらですか?内訳を解説

年間の維持費はいくらですか?内訳を解説
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GRヤリスを所有する上で、車両本体価格だけでなく、年間の維持費がどれくらいかかるのかは非常に重要なポイントです。高性能なスポーツカーであるため、一般的なコンパクトカーよりは費用がかさむことを念頭に置く必要があります。

年間の維持費は、走行距離や駐車場の有無、加入する任意保険の内容などによって大きく変動しますが、おおよその目安として年間30万円から40万円程度を見ておくとよいでしょう。以下に、主な費用の内訳を解説します。

費用項目年間費用の目安 (RZ/MT車の場合)備考
自動車税39,500円毎年5月に納付。総排気量1,618ccのため1.5L超~2.0L以下の区分。
自動車重量税12,300円車検時に2年分(24,600円)を納付。車両重量1,280kgのため~1.5t以下の区分。
自賠責保険料約10,000円車検時に2年分を納付。これを1年あたりに換算した金額。
任意保険料60,000円~150,000円年齢、等級、車両保険の有無で大きく変動。GRヤリスは料率クラスが高め。
ガソリン代約116,000円年間8,000km走行、燃費12.4km/L、ハイオク180円/Lで計算。
メンテナンス費用20,000円~50,000円エンジンオイル、タイヤ、ブレーキパッドなどの消耗品交換費用。
駐車場代変動自宅に駐車場がない場合は月極駐車場代が別途必要。
合計(駐車場代除く)約238,800円~378,800円あくまで一例。これに加えて車検費用(2年に1度)が必要。

各費用の詳細

自動車税は、排気量に応じて課される税金で、GRヤリスの場合は年間39,500円です。自動車重量税と自賠責保険料は、車検の際にまとめて支払います。

任意保険料は、個人差が最も大きい項目です。GRヤリスはスポーツカーに分類され、盗難リスクも高いため、保険料の料率クラスが高めに設定されています。そのため、特に若い世代のドライバーや、車両保険を付ける場合には、保険料が高額になる傾向があります。複数の保険会社から見積もりを取り、比較検討することが賢明です。

ガソリン代も大きな割合を占めます。GRヤリスはハイオク仕様であり、燃費も決して良くはないため、走行距離が伸びるほど負担は大きくなります。

メンテナンス費用としては、定期的なエンジンオイル交換が必要です。また、スポーツ走行を楽しむ場合は、タイヤやブレーキパッドの消耗も早くなるため、交換費用を念頭に置いておく必要があります。

これらの費用に加えて、2年に1度は車検費用(法定費用+点検整備費用で約10万円~)が必要になります。GRヤリスとのカーライフを長く楽しむためには、これらの維持費をあらかじめ計画に組み込んでおくことが不可欠です。

MTとATどっちがいい?それぞれのメリット

MTとATどっちがいい?それぞれのメリット
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2024年の進化型モデルから、GRヤリスには新開発の8速オートマチックトランスミッション「GR-DAT」が追加され、従来の6速マニュアルトランスミッション(MT)と合わせて、2つの選択肢が用意されました。どちらを選ぶべきかは、ドライバーの好みや主な使用用途によって大きく異なります。

車を操る楽しさを追求する「6速MT」

MTの最大のメリットは、何と言っても車を自らの手足で操るダイレクトな感覚と、車との一体感を味わえることです。クラッチを繋ぎ、シフトレバーを操作してギアを選択する一連の動作は、運転の根源的な楽しさに満ちています。エンジンの回転数を自分でコントロールし、ヒール&トゥを駆使してコーナーに進入していくといった操作は、MTでしか味わえない醍醐味です。

構造がATに比べてシンプルなため、故障のリスクが比較的低いという意見もあります。運転操作自体を楽しみたい、車と対話しながら走りたいと考える方にとっては、MTが最良の選択となるでしょう。

ただし、渋滞時や市街地でのストップ&ゴーが多い場面では、頻繁なクラッチ操作が疲労につながるというデメリットもあります。

快適性と速さを両立した新開発「8速AT(GR-DAT)」

一方、新開発の8速AT「GR-DAT」は、単なるイージードライブのためのATではありません。「GAZOO Racing Direct Automatic Transmission」の名の通り、スポーツ走行を前提に開発された高性能なトランスミッションです。

そのメリットは、まず快適性です。渋滞時の疲労が大幅に軽減されるのはもちろん、シフト操作から解放されることで、ドライバーはステアリングやブレーキ、アクセルの操作により集中できます。

そして、特筆すべきはその「速さ」です。プロドライバーがサーキットでテストを重ねて開発された制御ソフトウェアは、ブレーキの踏み込み量や速度などからドライバーの意図を先読みし、最適なギアを瞬時に選択します。その変速スピードは世界トップレベルとされ、人間が操作するMTよりも速いラップタイムを記録することも可能です。

MTに比べて車両重量が20kg増加するというデメリットはありますが、それを補って余りある速さと快適性を両立しているのがGR-DATの魅力です。普段使いの快適性を重視しつつ、いざという時には本格的なスポーツ走行も楽しみたいという方に最適な選択肢と言えます。

GRヤリスとGR86どっちが速いか徹底比較

GRヤリスとGR86どっちが速いか徹底比較
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トヨタのスポーツカーブランド「GR」の中でも、GRヤリスとGR86は特に人気の高いモデルですが、そのキャラクターは大きく異なります。どちらが速いのかという問いに対しては、状況によって答えが変わります。

加速性能と全天候性能の「GRヤリス」

単純な加速性能や、あらゆる路面状況での速さを求めるのであれば、GRヤリスに軍配が上がります。 GRヤリスは、最高出力304PSを発生する1.6Lターボエンジンと、その強大なパワーを4つのタイヤに効率よく伝える電子制御4WDシステム「GR-FOUR」を搭載しています。これにより、停止状態からの発進加速(0-100km/h加速など)では、後輪駆動のGR86を上回る速さを見せます。

また、雨天時や滑りやすい路面など、コンディションが悪い状況においても、4WDならではの高い安定性とトラクション性能を発揮し、安心してアクセルを踏んでいくことができます。サーキットにおいても、テクニカルなコーナーが続くコースや、天候が変わりやすい状況ではGRヤリスが有利になる場面が多いと考えられます。

軽快なハンドリングと操る楽しさの「GR86」

一方のGR86は、最高出力235PSの2.4L水平対向自然吸気エンジンを搭載した後輪駆動(FR)のスポーツカーです。スペック上のパワーではGRヤリスに劣りますが、その魅力は数値だけでは測れません。

GR86の真骨頂は、軽量・低重心なFRレイアウトがもたらす素直で軽快なハンドリングにあります。ステアリングを切った分だけ素直に曲がり、アクセル操作で車の向きをコントロールする「操る楽しさ」は、FRならではのものです。エンジンも自然吸気のため、高回転までリニアに吹け上がる気持ちよさがあります。

速さという点では、高速コーナーが続くようなサーキットでは、そのハンドリングの良さを活かしてGRヤリスに迫る走りを見せることもあります。

要するに、絶対的な速さや悪天候下での安定性を重視するならGRヤリス、FRならではのピュアなハンドリングや車を操る感覚をじっくり味わいたいならGR86が、それぞれ適していると言えるでしょう。

GRヤリス GR86
エンジン1.6L 直列3気筒ターボ2.4L 水平対向4気筒 自然吸気
最高出力224kW (304PS) / 6,500rpm173kW (235PS) / 7,000rpm
最大トルク400N・m (40.8kgf・m) / 3,250~4,600rpm250N・m (25.5kgf・m) / 3,700rpm
駆動方式4WD (GR-FOUR)FR (後輪駆動)
車両重量 (MT)1,280kg1,270kg
強み圧倒的な加速力、全天候型の安定性軽量・低重心、ピュアなハンドリング

驚異の0-400mタイムとその加速力

驚異の0-400mタイムとその加速力
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GRヤリスのパフォーマンスを語る上で、その圧倒的な加速力は欠かせない要素です。その実力を示す指標の一つとして、停止状態から400mの距離を何秒で走り抜けられるかという「0-400m(ゼロヨン)」タイムがあります。

GRヤリスの0-400mタイムは、メディアのテストなどでは14秒台前半から中盤を記録しており、これはコンパクトカーのカテゴリーではまさに異次元の速さです。このタイムは、より排気量の大きなスポーツカーに匹敵するものであり、GRヤリスがいかに非凡な動力性能を持っているかを物語っています。

この驚異的な加速力を生み出しているのは、3つの要素の相乗効果です。 第一に、軽量なボディです。アルミやカーボンといった軽量素材を多用することで、車両重量を1,280kg(RZ/MT車)に抑えています。

第二に、ハイパワーなエンジンです。1.6Lという小排気量ながら、ターボチャージャーによって過給することで、最高出力224kW(304PS)、最大トルク400N・m(40.8kg・f)という、クラスを超えたパワーを絞り出します。

そして第三に、そのパワーを無駄なく路面に伝える4WDシステム「GR-FOUR」の存在です。発進時に4つのタイヤがしっかりと路面を掴むことで、タイヤの空転によるタイムロスを最小限に抑え、強烈なダッシュを可能にしています。

特に、エンジン回転数が3,000rpmを超えたあたりからの加速は強烈で、背中がシートに押し付けられるような感覚を味わえます。このパワフルな加速感は、高速道路への合流や追い越しなど、日常的なシーンにおいても絶大な安心感と余裕をもたらしてくれます。GRヤリスの加速力は、単に速いだけでなく、運転の楽しさと安全性を高める上でも大きな武器となっているのです。

まとめ:GRヤリスは普段使いもこなす魅力的な車

この記事では、GRヤリスの普段使いに関する様々な側面を解説してきました。最後に、その要点をまとめます。

  • GRヤリスは走りの楽しさを最優先した車
  • 後悔する主な理由は後席の狭さや乗り心地など実用面
  • 運転好きにとってはデメリットを上回る魅力がある
  • 弱点は燃費、3ドアの不便さ、硬めの乗り心地
  • 良い所は圧倒的な走行性能と運転の一体感
  • 人気グレードは装備充実のRZ “High performance”
  • RZでも基本性能は同じでコストパフォーマンスが高い
  • 人気色は白系のプラチナホワイトパールマイカや黒系
  • 購入層は40代から50代の男性が中心だが女性オーナーもいる
  • RCグレードの廃止は生産体制の制約が理由
  • 年間の維持費は税金や保険を含め30万円台からが目安
  • MTは操る楽しさ、ATは快適性と速さを両立
  • 直線加速や悪天候ではGRヤリスがGR86より速い
  • 0-400mタイムは14秒台とクラスを超えた加速力を持つ
  • 注意点を理解すれば普段使いも十分に可能である